教育講演 1

 

脳卒中地域連携における歯科の役割

 
 

 

古屋 純一
昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 准教授

  高齢者に多い脳卒中は口腔機能を低下させ、摂食嚥下障害を惹起するだけでなく、その療養生活も長期になりやすいため、今後の高齢者医療・介護・福祉における重要な課題の1つである。演者は、外来に加えて、病院や施設、居宅への訪問診療を行っているが、脳卒中患者はもともと口腔の状態が悪く、その後も継続的な口腔管理が必要となることが多い印象を持っている。

 脳卒中患者では急性期に誤嚥を伴うことも多い。誤嚥性肺炎の予防および経口摂取確立の観点からは、早期からの摂食嚥下リハビリテーションが重要であるが、口腔の問題により難渋することも多い。そのため、急性期から多職種が連携し、柔軟に役割を変化させながら多職種で口腔を管理し、患者の口腔機能を最大限に引き出すことが大切である。また、急性期での疾病治療後には、回復期リハビリテーション、在宅や施設での療養生活が続いていく。
 
 2019年に施行された脳卒中・循環器病対策基本法では、切れ目のないシームレスな医療・介護の体制が対策の基盤となっている。そのため、脳卒中患者の口腔管理も、急性期、回復期、維持期で、それぞれの地域でシームレスにつなげていくことが大事である。そのためには、歯科が口腔管理を行うという固定概念を捨て、職種や施設を超えて口腔を管理することが必要である。その際のポイントは、共通言語を大事にすること、そして多職種連携・地域連携するというマインドではなく、気がついたら自然と連携していたというようなマインドを皆が持てることである。
 
 本講演では、急性期での多職種による口腔管理、回復期・維持期との地域連携に関する演者の経験から、脳卒中地域連携における歯科の役割について、改めて皆さんと考えてみたい。


略 歴
古屋 純一(ふるや・じゅんいち) 
1996年 東京医科歯科大学歯学部卒業
2000年 東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学修了 歯学博士
2005年 岩手医科大学歯学部歯科補綴学第一講座
2013年〜2014年 ハーバード大学歯学部客員准教授
2014年 岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座
2015年 東京医科歯科大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野
2020年 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座
 
役 職
日本老年歯科医学会専門医・指導医・摂食機能療法専門歯科医師
日本補綴歯科学会専門医・指導医
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
日本臨床栄養代謝学会学術評議員
 

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